2023年のJリーグシーズンも終わり、OJ&ozamendiのお二人で運営するSTEP ONでは2023年シーズン振り返りがキャストされました。
その#45では、2023年のマリノスがしようとしたこと、出来なかったこと等、非常に興味深い内容でしたのでここに書き残します。因みにすべてを書き起こしていません。戦術的側面に注目してピックアップしています。また、筆者の見解含み記載するので、必ずしもお二人の意見をトレース出来ていないかもしれません。
ぜひ、1回は上記のリンクから#45を聞いてお二人の会話から、2023年のマリノスの闘いを思い出していただければと思います。
OJ
2023年は主力メンバーのケガに泣かされた。
去年は、本来のポジションの選手を充てることが出来た。なので相手を押し込むことが出来た。
2023年はSB本職の選手がケガで長期離脱し、代替の選手を機能させる運用をせざるを得なくなってしまった。
代替選手がダメなのではなく、素晴らしい選手。しかし相手陣地へ押し込む事が去年より出来なくなった。
OZA
Xに流れてくるような23年のマリノスについての見解とは違う意見を持っている。
2018年に、監督がエリク・モンバエルツからアンジェ・ポステコグルーに変わった。
その翌年の2019年、マルコスシステム*1が完成した。
マルコスシステムでは、左サイドで敵を引き付けることで、センターのマルコスのプレイエリアを確保し、生かすことでエリキ・ナシメント・ジ・リマ、マテウス・カストロの質的優位性を持ちつつ、
右サイドでは、サイドバックの松原健が偽サイドバックとしてインサイドハーフまで上がり、仲川輝人と連携することで、相手を前後分断し速い攻撃で点を取っていた。
対して2020年は、自発的にも相手チームが前後分断を作っても、相手チームがコンパクトに戻り、マリノスをブロックするようになって、マリノスが勝てなくなった。アンジェも打開策を考えてはいたが、新型コロナウィルスの蔓延、ACL出場による過密日程により、マルコスシステムの次をマリノスに落とし込めなかった。
2021年序盤は、マリノスのサイドバックとウィングが同一レーンに入り、相手のサイドバックとサイドハーフの幅を広げて仕留めようとしていた。しかし、シーズン途中でアンジェがトッテナムホットスパーへ移籍し、ケヴィン・マスカットへ監督が変わったことで行ったのが、ジョゼ・エウベル・ピメンテウ・ダ・シウヴァと、小池龍太のセットでの対応。右サイドのエウベルがボールを持っている間に、小池がポケット*2を取ってそこからクロスを上げたりして、相手を仕留めるようなパターンで戦うようになった。その対策として、右サイドのエウベル、小池のプレイスペースを消す対策を打ってくると点が取れなくなり、21年は2位で終わった。
ケヴィンがシーズン当初から指揮を執った2022年。
エウベルと永戸勝也が左サイドでコンビを組み、右サイドは水沼宏太と小池も絡みながら、水沼のクロスでアンデルソン・ロペスや西村拓真、レオ・セアラで点を取っていた。
その後相手の対策で、ボランチとセンターバック間のパス交換を防がれるようになり、相手に時間的猶予を与えることで、マリノスのサイドバックとウィングより先に、自分たちのサイドバックとウィングの迎撃態勢を取らせられるようになってしまい、2連敗するようになってしまった。
以上、長く語ったのには理由がある。
2019年からのマリノスの戦法は、”型”があり、”早い攻撃”であった。
その副産物として、”オープンな試合が多くなり、チームが疲れてしまう”状況に陥ってしまった。
(それはマリノスに限らず、今のJリーグがそう)
そこで次のステップとして、”ボールを自分たちで保持して主体的に攻めるときどうするか?”
って話になる。今は、Jリーグのサッカーとして相手との関係的にもオープンになってしまう。
近年、マリノスがこの戦い方をする場合に、ウィングを置き、センターフォワードに優位性がとれる選手を置くことが、たとえ選手が抜かれても行ってきた。この強いウィングとセンターフォワードを置いて相手を崩し点を取るい方法であれば、23年も優勝できたと思うし、2年くらいは勝てると思う・・・、ただし、それに次があるのか?とも思う。
OJ
それについて、わかりやすく説明しても良いですか?
例えが明確にハマるかはどうかはおいておいて、自分が学生時代に将来に向けて短期的な見返りはないけど、中期的に見たときに投資を行うと思う。そして、自分事では将来に向けて投資をする事の重要性は理解できるのに、会社やサッカーを見たときに、近視眼的に短期的な結果を求めてしまう。
23年のマリノスは、目先の優勝を求めるだけでなく、10年、20年先を見据えて、
J2へ降格せず、常に優勝争いを出来るクラブになるために試行していると自分は考えている。
OZA
自分的には、最近よく言われるアタッキングフットボールとは、進化を止めないフットボールの事を指していると思う。
アタッキングと言うとがんがん攻めて点を取るイメージになり、早い前線選手を生かした攻撃となるが、マリノスは今までそれで優勝してきた。
今年は、ボールの保持、そして相手選手を引き付けて周りの選手を生かすプレイをしているマリノスが次に目指すのは何かと言ったら、敵陣地で、ローテンポでゲームを進め、型を防がれたら停滞し次の型が生まれるまで負ける様なチーム戦術から脱却し、次の新しい進化に行こうとしている中の取り組みと思っている。
相手も自分たちのやり方でマリノスに勝とうとしているし、マリノスが今取り組んでいることを相手もわかっている中で、次の進化を実戦の中でやっていくことは難しい。
そしてそのやり方、伝え方にもなるが例えば仁川戦。
今までの型をなるべく作らないような意識でやっていたと思う。ケヴィンも言ってると思うしチームとしても意識統一はあると思う。しかし仁川戦で感じたのは、相手ブロック541に対し、5と4の間のところで5人は5レーン*3を埋めてそこでしっかり保持。そこで三角形を作り相手陣地へ押し込んでいきましょう、そこから点を取りましょう的な型が感じた。
5レーンの埋め方は、水沼とエウベルが外にポジショニングしたときに残りの3レーンを、植中朝日、ナムテヒ、西村を合わせた5人で5レーンを埋めていた。
西村は左に位置して、本来のポジションではないけど、苦労しながらそのポジションで背中でボールを受けて周りの味方を生かそうとしていた。
攻撃時に5レーンに選手を配置するのは、人数をかけてブロックをひいて守る相手に対しマリノスも人数をかけて相手の守備を打開するため。
そして、もう一つの理由として、相手のマリノス第二形態の対応策としてボランチーセンターバック間のパスを防ぐ対応として、最終ラインに人数をかけずに対応できたことに、マスカット監督のこだわりがあったかもしれないと、個人的には考えている。
しかしピッチの事象として起こるのは、前線で相手に背を向けて5レーンで味方からボールを受ける動きをしても、マリノスは相手の541の中盤に位置する”4”の位置の選手を引き出すような動きをマリノスは構造的にしない。
その結果として、相手541の”5”と”4”の間の狭い空間の中でマリノスの選手の動きは少なくなり、相手は、前向きに構えたところにボールが来たところを、前に相手選手が押し出せば、マリノスの選手を捕まえやすくなっていた。
そして相手のサイドバックもマリノスの選手を捕まえるためにポジションを上げているので、相手ボールになってからの相手カウンターとなる事象が発生していた。
それに対して、今までマリノスが行っていた”早い攻撃”を実現するためにそこに特化した選手を集めていたが、今シーズンは、同じ選手で、ブロック破壊と静的な位置取りで攻めるという事をやろうとしていた。
それはつまり、西村だけではなくほとんどの選手が自分の特性でない事にチャレンジしていた様に見えた。
では、それを何故ACLでもやるかというと、今後のステップアップするために大事なことと考えているからと思う。(やっていることは超いびつとは思うけど)
サッカー以外の話になるかもしれないけど、試合後の選手の表情なんか見てると、マスカットの意思は通訳を通じてでも選手には伝わって皆わかっていると思う、
自分の特性に合っていないことをやろうとしていることが。これからなにをしなければならないかも。皆迷いながら、孤立してやっている状況と思う。
例えば、後半途中から村上が入ったときとか、水沼が外にいて相手のポケット攻撃を村上がするとかやっていいと思うけどやってない。それは、
”押し込んで相手がブロックしたことに対して、みんなで相手陣地に入って押し込んで5レーン作って、しかも型も作らないでみんなで考えていこうっていう型にはまってる”
のかなって感じ。
型にはまらないようにすることで、孤立して迷っている状況に見える。
そういうマリノスの次に向かわないといけないステップ。しかも今までいた選手の中でやってるっていう、次のステップに行こうっていう感じだと思う。
それが9月以降、ブロックを固められた相手に対し起きている症状で、固められた相手に対して、例えば札幌線以降、守備でそういうのを打開もしてるし全然できるチームだけど、
じゃあそういうチームに対しては、自分たちが次のステップに行くために新たな挑戦しようっていうことなんだろうなと。
OJ
今のチームで普通にやれば優勝できるのにそれをせず、新たなチャレンジをするのはどのような目標のためなのだろうか?
その目標は、STEPONを聞いてくれている人たちとは共有したい。
OZA
マリノスが優勝した2019年と2020年は、基本的に同じサッカーをしている。
早いサッカー、ブラジル人が生きるサッカー、前線が生きるサッカー。
今のJリーグで勝つためには最適なサッカーをしている。
それはセレッソや新潟が次にステップアップするために行っていることと、同じ。
OJ
今までのやり方で優勝を目指すことが出来たのに、あえてそれをせず、次のステップを目指した理由として、「マリノスのフィロソフィーがあるから」だけでは個人的には弱いと感じる。なぜ今のマリノス、そこまでしてフィロソフィーを追っているのだろうか?
OZA
その話をきいて思うのは、(マリノスの)今のやりかたは下手な気もする。
型を作らないことが型を作っていることになっているし、チャレンジしようと思っても結果的にチャレンジしていないし。
ただ、やりたい理由とか、何に対してこうチャレンジしてるとか、その苦痛というか、苦闘はすごく理解をできる。
だからやり方として、サッカーじゃない部分、例えば、この時にマスカットさんってどういう伝え方してんのかとか、どこまで伝えてんのかとか、後、選手がどれぐらいのコミュニケーションが取ろうとしてるのかとか、もしかしたら選手は、いや、もう勘弁みたいな。
そういうところ、内部的な人しかわからない事が気になっている。
OJ
資本主義的な枠組みで考えると、今年の神戸の様に結果を残すやり方、先ではなく今結果を出すことは正しいと思う。
マリノスもそれが出来たのに、それを敢えてやらずにそこを目指すことの正解は無いかもしれないけど、なんとなくでも理解しておかないと、毎年マリサポっては苦しむことになる。
OZA
苦しもう。どんなことがあっても結局マリノスが好きなことは変わらないなら、苦しもう。それも人生の楽しみ。
*1 2019年当初のフォーメーションは4123で、2に天野純と三好康児が、
3の左にマルコス・ジュニオールがいた。しかし結果が芳しくなかったために、
マルコスをトップ下したところ機能し始めたシステムのことを指す
*2 https://tele-saka.com/near-zone/
*3 https://note.com/nekoni_koban731/n/na53eb7749cfb?sub_rt=share_h